花・レッスン・イギリスのフラワースクール・日々の私的な出来事など綴っています。旧ブログ
時々花ブログ
英国チャールズ3世の戴冠式を飾った花々
2023年5月6日土曜日 ウェストミンスター大聖堂にてチャールズIII世国王の戴冠式がありました。王室より聖堂に飾られた花についての発表がありました。ゴシック建築の壮大な建物にはどんな花が飾られたのでしょう。
チャールズ国王は豊かで素晴らしい自然を愛し、環境保存にも関心が高く、造園にもに非常に造詣が深い方であります。当然ながら大自然を誇るイギリスやスコットランドの各地域にある英国王立庭園の樹々や英国の様々な地域の花々による装飾でありました。デザイナーは2005年の国王とカミラ王妃の結婚式、また2011年のウィリアム王子とキャサリン妃のウェデイング装飾を担当したShane Connolly氏によるものです。地元イギリス産の季節の植物を持てばどんなスケールの物にでも対応できるとし、今の英国において最も美しい花々を競演させるべくセレクションであったと思います。Connolly氏によると、今回の戴冠式の花飾りは、故エリザベス女王の自然へ賛美と庭園への情熱を受け継ぎ、持続可能な未来を望んでいる国王と王妃ご自身の表れであるとの事です。
花の置かれた場所は4カ所 <The great Alter 大祭壇>・<The Great West Door 東の大扉>・<The Grave of the Unknown Warrior 戦没者の碑>・<The Quire メインシアター>
<The great Alter 大祭壇>
英国にある5つの王立庭園の樹々による花飾りです。シャクヤクやツツジなど花のついている枝が多くみられました。その中には国王の両親であるエリザベス女王とフィリップ殿下により1978年ウィスリーに植樹された赤い葉のブナの樹一対も含まれ、周りにはまだ赤い蕾のままのクラブアップルの枝、ジューンベリー、椿、小さな花を付けた紅葉、ハシバミ(ヘーゼル)。英国王立ブリッジウォーターガーデンからは、古木のツツジにアザレアなどの枝が切り出され、かってのビクトリア女王も楽しまれたのではないかと思われるような樹々が配されました。樹木の葉の色はどちらかというと緑ものよりもパープルかかった赤、オレンジ色、あるいはくすんだ黄色なども多く、花は落ち着きのある赤やピンク、オレンジなどの色合いで、重厚なアビーの雰囲気にマッチしていると感じました。
その他の植物はチューリップ、ラナンキュラス、ポピー、ヒヤシンス、ライラック、ビバーナムなどで、お花のセレクションを見る限りではやはり日本よりちょっと寒いのかなと思われます。花々の色はとてもブライトな赤、オレンジ、ピンク、ライムグリーン、ライトイエローとおちついた樹木の下で華やかな色の競演です。
<The Great West Door 東の大扉>
イチイのツインのトピアリー。その足元には牧草や、黄色い下向きの花をつけるプリムラ(cowslips)、サクラソウやスミレなどが植えられています。これらの飾りはサンドリガムにできるトピアリーガーデンに国王戴冠の記念として移動される予定です。
<The Grave of the Unknown Warrior 戦没者の碑>
イギリスの春の牧草地で見られるカラフルな花が戦没者の碑の周りを囲む飾りとなっており、使われた花は変わらぬ愛を表すローズマリー、月桂樹、ブルーベル、勿忘草、騎士道を表す水仙、黄色のプリムラ、若き日の思い出を表すライラック、2005年のカミラ王妃のウェディングブーケに用いられたスズランとプリムラ(auriculas)などの構成です。尚、春の牧草地の風景を模したカードはゲストたちへの招待状のデザインでもあったとの事です。
<The Quire メインシアター>
セレモニーが執り行われるイタリアン仕様のモザイクが敷き詰められたシアターエリアには、ゴールド、今年流行色でもあるリッチなバーガンディー、紫、ピンクに赤など大祭壇の飾りや床のモザイク、そして国王の纏うローブの色などに合わせられました。尚、すべてのデザインは最初に色を決め、それから見合う花を選択たとの事です。こちらのエリアには国王の大好きなヘレボラス、ハニーサックル、チューリップ、ラナンキュラス、ジャスミン、古代より精霊のシンボルであるオダマキ、葉物はローズマリー、ブナ、月桂樹にハシバミ(ヘーゼル)の葉とスカイ島より持ち込まれたワイルドフラワーの数々などで飾られました。
装飾はすべてフォームフリー、すなわち吸水性のフォームを使用しない形でアレンジされ、セレモニーの後にはチャリティ団体の「Floral Angels」により病院やケアホーム、ホスピスなどに届けられます。カミラ王妃はこの団体のパトロンでもあります。
花を提供した組織は「Flowers from the Farm」という、切り花生産者たちをサポートする小さな非営利団体で、地球にやさしい栽培を続けている生産者とのつながりが深く、デザイナーのConnolly氏により選ばれました。この団体に所属する80の生産者より集められた花々は120種類以上にもなり、限られた時間での水揚げをしての出荷は大変な作業だったと思います。
英国での地球環境への取り組み、およびそれを支持する生産者へのサポート活動は国民へのPRも盛んで、人々の目に留まり関心を集めています。欧米で禁止されている農薬に認可を与える日本とは大きく事なる点であると感じます。写真は著作権の問題がありますので掲載はいたしておりません。下に参照リンクをリストいたしますので、写真は動画などでご覧ください。
References
https://www.royal.uk/news-and-activity/2023-05-04/flowers-at-the-coronation-service-of-the-king-and-the-queen-consort 英国王室のアナウンス
https://www.youtube.com/watch?v=ThrVkzAurmU, The Independent誌 字幕での解説と花のクローズアップの動画、デザイナーがFlowers from the Farmについての解説もつけているわかりやすい動画
https://www.youtube.com/watch?v=_mKrS0NOLbU Shane Connolly氏による樹々の選ばれた理由などの解説
https://www.youtube.com/watch?v=JSAG0x_AQvw Flowers from the Farm 団体の紹介や、式典の花を収穫している様子の動画
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インターフローラ ワールドカップ 2023年

2023年9月7日から9日までイギリスのマンチェスターで4年に一度のフローリストの世界チャンピオンを決定するコンペティションが開催されます。前回2019年はアメリカのフィラデルフィアで行われました。フラワーデザインの最高峰の技術と創作力を競う大会で、業界では今年一番注目されるイベントです。全体のテーマは 'our natural world - 我々の自然な世界'、直訳してしまいましたが、各競技者は豊かな自然を携える地球への称賛を持ち、持続可能な精神と信念において、地球にある天然資材を利用する。世界中花の仕事に携わっているすべてのフローリストたちにもぜひ実行していただきたい大切なメッセージです。
参加するデザイナーたちはそれぞれの国の競技会で勝ち抜いてきた強者たちです。花と資材を組み合わせるアイディアはどれも独創的で、限られた時間内に作成する大作はトレーニング積み重ねとその経験からなる賜物です。競技会の各ブースではパリッしたよい意味での緊迫した空気が漂い、私たちにも十分伝わってきます。競技者の緊張感までもが身近で感じられ、かなり刺激的な瞬間です。ここ数年はコロナの影響で、様々な競技会が中止や延期が続き、今回は久々に観客を入れてのコンペとなります。
ワールドカップの競技は9月7日と8日の2日にわたりテーマごとの作品作りが行われています。そして最後の日は作品の展示が一同に並べられ素晴らしいエクジビション会場となります。その間、過去の優勝者によるデモやレッスンも開催されます。こちらも同じ会場内、もしくは近くの建物で移動も少なく短時間で著名なデザイナーから学ぶ事が出来ます。ホテルもフライトもすぐに満室となります。お早めにご予約を!
チケット情報 www.interflora.co.uk/page/world-cup
- 3日間パス Ultimate Bundle Ticket
9月7日-9日 10:00-17:30
217.20GBP(英国ポンド)約35,000円
3日間の入場料+2日のイブニングイベントパス
9月8日セミファイナル・ステージ18:30 to 23:45 カクテルと軽食付き
9月9日ファイナル・ステージ観戦と表彰式。Gala dinner: フォーマルパーティとなりますので、イブニングドレス・男性はブラックタイが必要)
ライブストリーミング受信権
- ライブ ストリーミング チケット 自宅でライブ観戦もありです。
16.51GBP(英国ポンド)約2,800円
同時開催で世界のトップデザイナーたちによるレッスンを3名ピックアップしました。この他にもいらっしゃいますのでHPをチェックして下さい。https://www.eventarena.co.uk/interflora/interflora-world-cup-1/florist-workshop-tickets
- Bart Hassam氏 前回のフィラデルフィア大会の王者です。
9月8日木曜日
Bart Hassam Florist Workshop
96.10GBP 約16,000円
https://www.eventarena.co.uk/interflora/interflora-world-cup-1/bart-hassam-thurs
- Frederic Dupre氏
9月8日木曜日
Frederic Dupre Florist Workshop
104.59GBP 約17,000円
https://www.eventarena.co.uk/interflora/interflora-world-cup-1/frederic-dupre-thurs
- Tamás Mezőffy Florist Workshop
9月9日土曜日
104.59GBP 約17,000円
https://www.eventarena.co.uk/interflora/interflora-world-cup-1/tamas-mezoffy-sat
クラスの費用はかなり魅力的なお値段です。一度にこれだけのデザイナーが集まるチャンスはあまりありません。レクチャーにも積極的に参加しぜひ有意義なステイにしてください。
下の写真は上海でのワールドカップに行ったときの競技の一つです。Shanghai Tangというお店の紙袋を使ってディスプレイを考えるというテーマでした。デザイナーたちにとっても最後のお題目となり、ここまで来ればもうリラックスして作業をしていて、とてもよい雰囲気でした。私にとっても一番印象的な一コマでした。





イギリスのフラワースクールも今年からMalvernにて再開します。詳細はFDBへ!
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アレルギー

最近花を触っていて花粉によるアレルギー反応が激しく、たびたび仕事にならないほどの長い時間鼻をかんでいます。よ~く考えてみると、過去にアレルギー反応があり酷い目にあっているのに、それを忘れてまた仕入れてしまう事がたびたびあるのです。呆れた家人がメモを取るようにとのアドバイス。こちらに記しておけば、単純にミスが減るのではないかと思っています。少しずつ書き足してゆきます。
キク科 ほとんどの菊の花、マトリカリア ガーベラ カモミール
セリ科 アストランチア ミシマサイコ レースフラワー ディル
フトモモ科 ユーカリ 'エクゾティカ'
マタタビ科 マタタビ属のキーウィの蔓の産毛 キーウィフルーツにもアレルギーがあるそうです。知らなくてとれたての蔓を山積し、レッスンで使うフレーム作っていたら一日えらい目にあいました。部屋のすべてを拭き掃除、床なんぞは2日に分けて合計4回。やっと鼻水が止まりました。
マメ科 ギンヨウアカシア/ミモザ
年齢を重ねてきた今、花を触ると手荒れが続いたり、今まで以上に花粉に敏感になってしまったりと症状が次第にひどくなってきます。特に感じるのは農薬です。農業の先進国ではサステイナビリティな地球への動きとして虫を使った害虫駆除をしています。日本の農業もどんどん人と地球にやさしく変わっていってほしいと思います。
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2023年の色 Viva Magenta ビバ・マジェンタ 赤!

毎年パントンという会社からその年の流行色が発表されます。特に影響を受けるのは布素材を使うファッション・インテリア、コスメなどの業界です。花業界も当然ながら連動しており、私も時々意識するようにしています。
2023年はマジェンタ「Viva Magenta 18-1750番」に決定。原色の赤とは異なり、ブルーベースに少しだけイエローベースを加え、どことなく自然界の大地からも連想させられるような赤。様々な未知の物が混ざりがあったような複雑な色に感じます。でも赤は赤、バイタルなアクティブゾーンに位置し、元気に行こうと背中を押してくれそうです。この色が選ばれたのは地球環境変動やそして長く続くパンデミックの状況下で、人々はより自然や大地の大切さを認識し感謝するようになったこの頃の傾向を反映しているとの事。染料の基はコチニールカイガラムシという昆虫。ググッテみたら綺麗な赤を持つカイガラムシでした。植物ではなく昆虫。天然染料であるがゆえに複雑な色なのでしょう。
この色を持ち合わせる花はバラ、カーネーション、マムにスカビオサ、アルストロメリアもあります。チューリップやパンジーなどもちょっとありそうな色です。蘭類ではシンピジュームが近い色あるかもしれません、今の時期でしたらクリスマスのアレンジメントで使う実物、ブルニアレッドがずばりそのもの、リューカデンドロンもそう。昨年使ったブロメリアレッドパロマも近い色。グラジオラス等こんな色があるといいかな。こんな色のシクラメンがあったら間違いなく買い。ちょっと考えただけでも花の世界では比較的簡単にマジェンタ色のピックアップが可能。色は最初に目に入り、その作品のイメージとなり印象に残る物。トレンドをちょっと踏まえるだけで、粋なアレンジメントは間違いなし!来年も花を慈しみその美しさの恩恵にあずかり、アレンジメントを楽しんでゆきましょう!
ビバ・マジェンタに近いお花手持ちのリストから拾ってみました。ご参考までに。





ref: https://www.pantone.com/
日曜日に参加できる生徒募集中デス。
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フロリアード2022 アルメーレ国際園芸博覧会
10年に一度オランダで園芸関係の博覧会が開催されます。今年はその年に当たり4月14日から10月9日までアルメーレの広大な会場にて開催されました。テーマは ”Growing Green Cities”、直訳すれば成長する緑の都市ですが、世界の国々が一丸となって、緑を育て持続可能で住みやすい都市を目指してゆきましょうというものです。植物、農作物から建築物など人々の暮らしに密着した今と未来の多岐にわたる園芸関連の展示がされます。日本も屋内のブースや、里山ファームガーデンの素敵な屋外のバヴィリオンで新種の切り花の紹介、日本伝統の活け花、盆栽やフラワーアレンジメントなどの展示がありました。
開催と同時に様々なコンペが繰り広げられ、日本から出店した多くの花ならびにディスプレイが沢山の賞を受賞し素晴らしい成績を残しました。出展全体の最高賞AIPH賞受賞との事でした。詳細は国土交通省のHPで掲載されておりますのでご参照下さい。
日本からデザイナーや庭師の方など様々な方が交代でお出かけになり会場のセットをなさったとの事です。チームの皆様、おめでとうございます。拝見したかったのですが諸事情により出かけられずとても残念です。実際に拝見していないためこんなペラいレポートとなってしまいましたが、日本の方々の活躍をお伝えしたいと思った次第です。
フロリアードのHP https://floriade.com/en/at-the-expo/
国土交通省のHP hhttps://www.mlit.go.jp/report/press/toshi10_hh_000430.html
受賞作品の詳細 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001516863.pdf 切り花の詳細が分かります
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追憶 エリザベスII女王陛下へのお別れの花
9月8日英国エリザベスII女王陛下がスコットランドのバルモラル宮殿にて崩御なさいました。バルモラル城はアバディーンの西約64kmに位置し、夏に利用されていた宮殿です。
9月19日ロンドンのウェストミンスター寺院にて壮大な葬儀が執り行われました。その間女王の棺は所縁のある様々な場所へ国民と最後のお別れの為に移動されました。棺にはイギリスらしい素敵なリースが置いてありました。
9月11日 バルモラル城からエディンバラのホリールード・ハウス宮殿へ移動
9月12日 ホリールード・ハウス宮殿からセント・ジャイルズ大聖堂に移動・安置
9月13日 午後5時、大聖堂よりロンドンのバッキンガム宮殿へ空路にて移動
9月14日 午後2時22分 バッキンガム宮殿よりウェストミンスター宮殿へ移動 その後4日間ホールで公開安置
9月19日 ロンドンのウェストミンスター寺院にて葬儀 同日夜ウィンザー城内のセント・ジョージ礼拝堂に埋葬
女王陛下の棺はスコットランドのバルモラル城を出発し、エディンバラの所縁のある場所を経てロンドンのウェストミンスター宮殿まで移動されました。その期間はすべて白のリースが棺に置かれていました。花はすべてバルモラル城並びにウィンザー城の庭の花であったそうです。9月11日のリースは白のダリア、フロックス、白のヘザー、スィートピーにシルバーグレーの松の枝。後日のリースには白のバラ、白のスプレーバラ、白のダリア、ボタンギク、スプレーエリンジウム、へーべとその葉、ドライのヘザー、またシルバーグレーのパインモミとピットスポルムの種類の一つのトベラなどのバルモラルの庭から、そしてロンドンのウィンザー城の庭からはラヴェンダーとローズマリーが集められたとの事です(この2つはピンクのリースに使用)。葬儀の当日は華やかなピンク系のリースとなっていました。リースの形が分からないくらい大きな物ででしたが、イギリスらしくナチュラルで優しく、大変素晴らしいリースであると感じました。
BBCの記事によりますと、ピンクの花のアレンジメントも国王チャールズIII世のご希望により、女王が過ごされたバッキンガム宮殿、クラレンスハウスならびにグロスターシャーにあるハイグローブハウスの庭から集めた花々だそうです。チャールズ国王のメッセージカードも添えられ、とても素敵なお手向けであったと思います。イギリスは花言葉を用いてのメッセージのやり取りが盛んな国でした。今回も家族のクィーンへの想いが花に託されていました。
<花によるメッセージの伝達 - フロリオグラフィー>
使われていた花のローズマリーには「追憶/remembrance」という花言葉があります。白のバラは「純潔」と「崇拝の象徴」であり、マートル(ギンバイカ)は「幸せな結婚として古代の象徴/ancient symbol of a happy marriage」、英国のロイヤルファミリーの結婚にはかならず庭からマートルが摘まれる習慣*があります。マートルはもちろんエリザベス女王陛下の結婚式のブーケにも用いられました。そしてこのリースに使われたマートルは、なんと1947年の女王陛下の結婚式のブーケに使われたマートルの枝を庭に挿し木をして育てた樹の物であったとの事です。イングリッシュ・オークは「強い絆/strength」の意味がありまさに女王陛下の生涯にわたる勤勉なるご公務、そして絶え間ない国民への愛情の表われであります。スウィートピーには「別れ/farewell」という意味があります。これは昨年王配のフィリップ殿下がお亡くなりになった際、女王陛下自らが庭からお選びになった花だったそうです。
*マートルの習慣:ヴィクトリア女王が1840年2月の結婚式で、王配となるアルバート公の母君よりもらい受けたマートルの枝をウエディングブーケに使ったとの事。その後枝は英国南部のワイト島にあるオズボーンハウスの庭へ植樹され、王家代々のウエディングのブーケに入れられる習慣につながりました。またビクトリア女王は当時の重々しい色ドレスの習慣を退け、白のウエディングドレスをお召しになり以後一般に白のドレスが広まりました。髪飾りにはオレンジの花飾りを付け、こちらも大流行したそうです。
<環境への対応>
もう一つ特筆したいのは、チャールズ国王のご希望によりリースは環境問題に対応し英国産のコケとオークの小枝でベースが組まれており、そこに花が配されていたとの事です。わずかにシルバーのトレーが下に敷いてあるのが見えましたのでフォームが違うのかなと思った次第です。フラワーアレンジメント発祥の地であるイギリス、クラシックな方法もきちんと受け継がれている事はちょっと嬉しい発見でした。
<植物に関して・イギリスの習慣>
イギリスにおいては、ローズマリーは人生いろいろな場面で使われる植物です。花言葉は「追憶や記憶」。ハーブの見識者の目からは記憶力に作用する薬草としての見解があります。「愛」や「忠誠や忠義」などの意味も持ち合わせ結婚式にも用いられるポピュラーな植物です。小さく可愛いサムシングブルーの青い花も枝に付きます。また人生を終える時にも沢山のローズマリーの枝を棺に入れる習慣がある(あった)との事です。葬儀の時のリースは人生そのものを花で表現します。誕生したばかりの小さな蕾、少し開いた花、大きく開花した大輪の花、実物、そして枯れた枝や花すべてを使いその人の人生に重ねます。シルバーグレーのコニファー類は「永遠」を表し、必ずリースに用いられます。ウェストミンスターのペデスタルに用いられた柳の枝は「悲しみと服喪」を表し、白のジャスミンは「神からの贈り物」、ヘデラ(アイビー)は「永遠と忠実」という意味を含みます。
余談ですが、月曜日に朝にはかならず庭の花がクィーンの公務の机に届けられたそうです。プリムローズやスズラン、そしてスィートピーがお気に入りだったそうです。スィートピーは女王陛下の誕生日のお花でもありました。大げさではなくさりげなく咲くお花をお好みになられたご様子です。まるでクィーンのお人柄を表していたとガーデナーAlan Titchmarsh氏のお話です。
<葬儀当日棺のアレンジメントのお花> 写真からわかる範囲でピックアップしました
バラ ピンク 数種類
ヘリクリサム
ダリア ディープパープル
スプレーバラ イエロー
ローズヒップのような実物 オレンジ
スカビオサ デイープパープル
マートル
インパチェンス
秋色アジサイ
スナップドラゴン オレンジ
セダム くすんだピンク
ローズマリー ブルーの花付き
センテッドゼラニウム/ペラルゴニウム
スィートピー
メッセージカードには "In loving and devoted memory, Charles R." 「愛と献身の記憶に」と記されていました。
<ウエストミンスターのペデスタル 祭場を飾る2つの大きなアレンジメント>
教会や寺院での催事がある時はかならず壇上横もしくはホールの目立つ所にペデスタルと呼ばれる大きなアレンジメントを置きます。葬儀当日のウエストミンスターのお花はすべて白。ユリ'Watch up'、バラ 'Avalanche'、ブバリア、グラジオラス、アルストロメリア、ダリア'Caro'、ダリア'Maarten Zwaan'、トルコキキョウ'Rosita'、葉はイングリッシュオーク、曲がった白樺/カバの枝、マートルの小枝、スズラン、中心部にはフォルミアム・テナックス(ニューサイラン/マオラン/ニュージーランドアサ)、ユーカリ'Popules Bes'、ルスカスなどが使われている豪華な花飾りでした。こちらで使われているマートルの小枝もやはり王妃が結婚した時の樹の枝だそうです。柳やジャスミン、ヘデラなども使われていたそうですが、写真からは確認できませんでした。
1926-2022 Her Majesty Queen Elizabeth II
英国領主の君主として70年の任務は本当に素晴らしい事です。世界の人々を魅了し続け様々な活動を通してイギリス国内はもとより世界へも多く貢献なされた事に多々なる感謝をいたします。
どうぞ安らかにお休み下さい。心よりご冥福をお祈りいたします。
References
https://www.theguardian.com/uk-news/live/2022/sep/19/queen-elizabeth-ii-state-funeral-westminster-abbey-updates?filterKeyEvents=false
https://twitter.com/RoyalFamily/status/1568902529957642240?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1568902529957642240%7Ctwgr%5Eeb2d4b99d66bcd4c76ac06e47c94e19e1b23cf0c%7Ctwcon%5Es1_&ref_url=https%3A%2F%2Fwww.womanandhome.com%2Flife%2Froyal-news%2Fthe-significance-of-queen-elizabeth-iis-floral-wreath-and-its-sweet-link-to-prince-philip%2F
https://www.bbc.com/news/uk-62954578
https://www.elledecor.com/celebrity-style/a41094629/queen-elizabeth-funeral-flowers/
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-62847201
https://www.townandcountrymag.com/society/tradition/a41277503/flowers-queen-elizabeths-coffin-meaning/
https://www.buzzfeednews.com/article/kelseyweekman/queen-elizabeth-ii-coffin-note-flowers-meaning
https://www.harpersbazaar.com/jp/celebrity/celebrity-news/a41236665/flowers-queen-elizabeth-coffin-funeral-meaning-220916-lift1/
https://www.floristrytradeclub.co.uk/post/hm-king-charles-iii-requests-oh-so-meaningful-and-sustainable-flowers-for-his-mother-the-queen
過去のブログより
英国ロイヤルウエディング ウェディングブーケと花飾り
"Saying it with flowers - 花に託して" シェイクスピアの誘惑と愛 花言葉
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素敵に変化 アンスリューム


夏のレッスンとお花のお配りはいつも7月上旬に済ませます。もちろんオーダーのある時はその限りではないのですが。今年の夏休み前にお届けしたお花はアンスリュームです。9月になりお客様へお届けの日程をご連絡した所、7月のお花まだ元気ですとのご連絡がありました。お写真もいただきびっくり仰天です!7月2日にお届けして今日は9月12日、2か月と10日も経っています。生産者さんは世界でも名が通るトップの方、そしてそれ以上にお客様のお手入れの賜物であることは間違いありません。
アンスリウムも紫陽花と同じように、花が付いてすぐのフレッシュな状態での出荷と花後しばらくしてから出荷するタイプがあります。後者はアンティークと呼ばれ、花後も茎から切り落とさずそのままにしておきます。そうすることによって色に深みが出て落ち着いたな雰囲気に変化してゆきます。秋色の独特な雰囲気を醸し出しフローリストにはとても人気です。お客様の写真を拝見すると色のついている仏炎苞がフレッシュな白からグリーンと変化しシックなアンスリュームとなっておりました。花瓶でもうまく管理すると長期にわたり色の変化も楽しませてくれるという事が分かりました。
皆さんもアンスリュームが手に入ったらしっかりと花瓶を洗い経過観察してみて下さい。良質なお花をお届けしております。府中市清水ヶ丘2丁目界隈の方、ご希望でしたらご連絡下さい。お花のお配り
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真夏のアレンジメント

美容院の鏡の横に置く小さなアレンジメントを考えていました。ここ最近の夏は尋常でない暑さに達しており、どんなによい花を用意したとしてもわずか数日で終わってしまうケースが多いですね。それはそうです。暑すぎて人間まで不調になるくらいですから、植物にダメージがないわけがありません。そんな時はフレッシュな花を使わないアレンジメントでもよいと思います。私はお花の先生ですから頭に浮かぶものはドライフラワーやエアープランツ、あるいは夏に強い観葉植物などです。今日はアレンジメントを習った事があるある方でしたら簡単にできる夏のアレンジメントのご紹介です。
このデザインには真夏のイメージを入れたかった事、ナチュラルなテーストであまりメインテの手間のかからないモノを柱としました。材料は木の皮、貝殻と砂、麻紐やコットンの紐などです。小さなエリアですのであまり凝りすぎず上方向に延びるシンプルな縦のアレンジメントにしました。お店は夜になるとエアコンが切れます。暑くてもこのアレンジメントでしたら心配無用かと思います。デザインのアプローチは 1.季節を考える 2.テーストを考える 3.茎の向く方向を考える このポイントを抑えれば材料は何でもいいんデス!
玄関先などエアコンの効きにくいエリアにはぴったりのアイディアですので、よろしかったらトライしてみて下さい!
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季節の実物

秋になると実物をアレンジメントに使う機会が多くなります。使いたい花材は沢山あるのですが、レッスンでは希望するすべてを購入する事はできません。幸いにも我が家の近くには空き地があったり、近くの競馬場のブロック塀に絡まった蔦の実などを取ってくることができます。今回はハロウィンアレンジメント。いろいろな花材を集めてきましたので楽しく使ってみて下さい!
写真には沖縄スズメウリ、ククミス、ホップ、クレマチスのシードヘッド、茶色いパニカム、茶色いエノコログサ、小さな光沢のある丸い緑の実はヒヨドリジョウゴで、赤い実はそれが熟した物などがあります。狭い庭ですが場所をみつけてはいろいろ植えています。
和風のホトトギスも今しかない花材、とても素敵です。
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秋の七草

9月に入ると日本各地から秋の花の開花のニュースが流れます。お彼岸の頃にはヒガンバナ、ケイトウ、ワレモコウ、色付き始めたコキアにヤマボウシの実、ドングリやトチの実などもすでに沢山落ちています。庭にはヤブランなど地味ですが長く咲く花もあります。
秋の七草は春の七草と違い、花を愛で見て楽しむものです。中秋の名月にススキや萩、女郎花などを生け込んでみてはいかがでしょう。
<秋の七草>
萩 ハギ
桔梗 キキョウ
葛 クズ
藤袴 フジバカマ
女郎花 オミナエシ
尾花 オバナ(ススキの事です)
撫子 ナデシコ
本日9月21日は中秋の名月との事で、十五夜です。でもかならずしも満月とはならないようです。中秋のお月見の習慣は旧暦8月15日夜、中国の代々の帝王たちが秋の月を祭る礼として始まった「仲秋節」から来ています。旧暦の8,9,10月の丁度秋の真中頃にあたり「中秋」となります。日本では平安時代、京都佐賀の大覚寺境内の大沢の池で船を浮かべ観月の宴が催されていたそうです。観月の花はもともと縁側などに飾られ、月への手向けの花とされていました。秋の七草が大活躍したのだと思います。
季節限定の草花は一年中出回っているわけではないので、あれ尾花はどこ?葛の花ってどんなのだったかしら?などすぐにひらめかない事が多いです。オバナはススキの事で動物の尾のような姿からそう呼ばれているそうです。葛は豆科の植物で蔓性で赤紫色の花を付けます。桔梗、藤袴、女郎花、撫子は時々市場で見ます。ススキは多摩川の土手にありそうですね。
空気が乾き、秋の虫の声も聞こえ始めました。たしかにお月見にはよい気候、花など活けて美味しいお菓子など頂きながら心を癒したいものですね。
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9月9日 重陽の節句 菊の節句

9月9日は重陽の節句とされ、日本でも5節句の一つとされています。古くは中国の習慣で、一番大きな陽の数が重なる事から「重陽」と呼ばれ、縁起よい日として季節の菊の花の香を移した綿で体を清め、菊を用いた料理やお酒で長寿を願ったそうです。尚、旧暦の9月は今でいう10月初旬から11月初旬の頃。菊が最も美しい時期でもあります。夜長月、長雨月(ながめつき)などとも呼ばれ、秋が深まり長雨から長月という名や、菊開月(きくさきづき)、菊月、紅葉月、稲刈月など植物の名が付く呼び方もあります。
日本の生け花の世界にとっても9月9日は大切な日です。菊の花のみでお生花(長さやなど詳細に決まりがある正式な形)を活け菊酒などを飲みお祝いをするそうです。以下古流松藤会の師範橋本理真先生よりご寄稿いただきました。
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重陽の菊
めでたい陽数が重なる九月九日。
古来中国ではこの日、菊の花びらを浸した酒を飲み、長寿を願いました。
『三国志』で名高い文帝は、7歳で即位したとき、15歳の命を予言されましたが、菊酒によって70歳まで生きたと言われています。
日本に菊がもたらされたのは、奈良時代の終わりから、平安時代の初めごろ。気品と香気ある菊は、端午の菖蒲と同様に邪気を祓い、また長寿を延ばすと伝えられてきました。
古流では、真に白・流に黄・受に赤の計九輪で重陽を表し、葉の色の青と、花器、花台の黒を合わせて五色とします。
白菊 ⇒ 真(しん) 真前 外添え
黄色菊 ⇒ 流(ながし) 外添え 埋(うずみ)
赤菊 ⇒ 受(うけ) 埋
赤菊 ⇒ 留(とめ)
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菊は中国から日本へ伝わり、天皇家の紋章として用いられています。菊は長寿と太陽を意味し代々の天皇が継承。身近な所では50円玉、パスポートなどで見られますね。
現在の菊は大きさも咲き方も豊富で、切り花としても抜群に長持ちするお花です。食用でも出回っていますので、酢の物にしたり、お酒に浮かべたり、あるいはサラダなどにも色と香りを添える事ができます。菊の花は難しい手入れも必要がないのでご自宅でもぜひ楽しんでみてはいかがでしょう。
きく Chrysanthemum
キク科キク属 Asteraceae
中国原産
菊についての記事
菊 マム
次世代の花 part4 菊 マム
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キアゲハの幼虫

今年の春大量にパセリを植えてキアゲハの幼虫たちに備えて待っていたのですが、夏になってもなかなか現れず。毎年庭を舞う蝶も一度か2度見かけた程度で、ちょっと落胆していました。これも地球温暖化の影響かと心落ち着かずです。しかし、9月になった途端一斉に卵から孵ったようです。キアゲハの幼虫たちはとても大食漢で、あっという間にパセリは軸だけの姿になりますが、毎年の経験から他の場所にもパセリを準備していたため、小さすぎる幼虫は移動させてあげました。今年は11匹。長雨にもかかわらずみんな順調に育っています。
幼虫観察、こんな事でも嬉しく感じます。健康でいられること感謝です。
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