英国チャールズ3世の戴冠式を飾った花々

Webmaster2023/05/08(月) - 14:39 に投稿

2023年5月6日土曜日 ウェストミンスター大聖堂にてチャールズIII世国王の戴冠式がありました。王室より聖堂に飾られた花についての発表がありました。ゴシック建築の壮大な建物にはどんな花が飾られたのでしょう。

チャールズ国王は豊かで素晴らしい自然を愛し、環境保存にも関心が高く、造園にもに非常に造詣が深い方であります。当然ながら大自然を誇るイギリスやスコットランドの各地域にある英国王立庭園の樹々や英国の様々な地域の花々による装飾でありました。デザイナーは2005年の国王とカミラ王妃の結婚式、また2011年のウィリアム王子とキャサリン妃のウェデイング装飾を担当したShane Connolly氏によるものです。地元イギリス産の季節の植物を持てばどんなスケールの物にでも対応できるとし、今の英国において最も美しい花々を競演させるべくセレクションであったと思います。Connolly氏によると、今回の戴冠式の花飾りは、故エリザベス女王の自然へ賛美と庭園への情熱を受け継ぎ、持続可能な未来を望んでいる国王と王妃ご自身の表れであるとの事です。

花の置かれた場所は4カ所 <The great Alter 大祭壇>・<The Great West Door 東の大扉>・<The Grave of the Unknown Warrior 戦没者の碑>・<The Quire メインシアター>

<The great Alter 大祭壇>
英国にある5つの王立庭園の樹々による花飾りです。シャクヤクやツツジなど花のついている枝が多くみられました。その中には国王の両親であるエリザベス女王とフィリップ殿下により1978年ウィスリーに植樹された赤い葉のブナの樹一対も含まれ、周りにはまだ赤い蕾のままのクラブアップルの枝、ジューンベリー、椿、小さな花を付けた紅葉、ハシバミ(ヘーゼル)。英国王立ブリッジウォーターガーデンからは、古木のツツジにアザレアなどの枝が切り出され、かってのビクトリア女王も楽しまれたのではないかと思われるような樹々が配されました。樹木の葉の色はどちらかというと緑ものよりもパープルかかった赤、オレンジ色、あるいはくすんだ黄色なども多く、花は落ち着きのある赤やピンク、オレンジなどの色合いで、重厚なアビーの雰囲気にマッチしていると感じました。

その他の植物はチューリップ、ラナンキュラス、ポピー、ヒヤシンス、ライラック、ビバーナムなどで、お花のセレクションを見る限りではやはり日本よりちょっと寒いのかなと思われます。花々の色はとてもブライトな赤、オレンジ、ピンク、ライムグリーン、ライトイエローとおちついた樹木の下で華やかな色の競演です。

<The Great West Door 東の大扉>
イチイのツインのトピアリー。その足元には牧草や、黄色い下向きの花をつけるプリムラ(cowslips)、サクラソウやスミレなどが植えられています。これらの飾りはサンドリガムにできるトピアリーガーデンに国王戴冠の記念として移動される予定です。

<The Grave of the Unknown Warrior 戦没者の碑>
イギリスの春の牧草地で見られるカラフルな花が戦没者の碑の周りを囲む飾りとなっており、使われた花は変わらぬ愛を表すローズマリー、月桂樹、ブルーベル、勿忘草、騎士道を表す水仙、黄色のプリムラ、若き日の思い出を表すライラック、2005年のカミラ王妃のウェディングブーケに用いられたスズランとプリムラ(auriculas)などの構成です。尚、春の牧草地の風景を模したカードはゲストたちへの招待状のデザインでもあったとの事です。

<The Quire メインシアター>
セレモニーが執り行われるイタリアン仕様のモザイクが敷き詰められたシアターエリアには、ゴールド、今年流行色でもあるリッチなバーガンディー、紫、ピンクに赤など大祭壇の飾りや床のモザイク、そして国王の纏うローブの色などに合わせられました。尚、すべてのデザインは最初に色を決め、それから見合う花を選択たとの事です。こちらのエリアには国王の大好きなヘレボラス、ハニーサックル、チューリップ、ラナンキュラス、ジャスミン、古代より精霊のシンボルであるオダマキ、葉物はローズマリー、ブナ、月桂樹にハシバミ(ヘーゼル)の葉とスカイ島より持ち込まれたワイルドフラワーの数々などで飾られました。

 
装飾はすべてフォームフリー、すなわち吸水性のフォームを使用しない形でアレンジされ、セレモニーの後にはチャリティ団体の「Floral Angels」により病院やケアホーム、ホスピスなどに届けられます。カミラ王妃はこの団体のパトロンでもあります。

花を提供した組織は「Flowers from the Farm」という、切り花生産者たちをサポートする小さな非営利団体で、地球にやさしい栽培を続けている生産者とのつながりが深く、デザイナーのConnolly氏により選ばれました。この団体に所属する80の生産者より集められた花々は120種類以上にもなり、限られた時間での水揚げをしての出荷は大変な作業だったと思います。

英国での地球環境への取り組み、およびそれを支持する生産者へのサポート活動は国民へのPRも盛んで、人々の目に留まり関心を集めています。欧米で禁止されている農薬に認可を与える日本とは大きく事なる点であると感じます。写真は著作権の問題がありますので掲載はいたしておりません。下に参照リンクをリストいたしますので、写真は動画などでご覧ください。

References
https://www.royal.uk/news-and-activity/2023-05-04/flowers-at-the-coronation-service-of-the-king-and-the-queen-consort 英国王室のアナウンス
https://www.youtube.com/watch?v=ThrVkzAurmU, The Independent誌 字幕での解説と花のクローズアップの動画、デザイナーがFlowers from the Farmについての解説もつけているわかりやすい動画
https://www.youtube.com/watch?v=_mKrS0NOLbU Shane Connolly氏による樹々の選ばれた理由などの解説
https://www.youtube.com/watch?v=JSAG0x_AQvw Flowers from the Farm 団体の紹介や、式典の花を収穫している様子の動画