御神木に付くヤドリギ

Webmaster2025/08/16(土) - 13:49 に投稿
神社の御神木に付くヤドリギ
神社の御神木に付くヤドリギ 別角度

2023年の12月に一度だけヤドリギを購入した事があります。今年の春、散歩をしていてふと見上げた近所の神社の御神木にこんもりとした塊を見つけました。こんな神聖な植物がしかもよりによって神社にあるなんて一人ソワソワとしてしまいました。偶然にも神秘的な発見だったのでご紹介しようと思った限りです。

ヤドリギはブナ、ミズナラ、ケヤキ、エノキ、コナラ、サクラ、リンゴ、ポプラ、シナノキなどの広葉樹に寄生する寄生植物です。常緑もしくは落葉性。根は宿主に張りつき水分やミネラルなどの養分を横取りしますが、自分でも光合成ができるため半寄生植物の位置づけです。春に花が咲き秋に実がなり、キレンジャク、ヒレンジャクやヒヨドリなどの鳥がその実をついばみ、ヤドリギ特有の粘った糞がまた他の樹に付く事により増えます。1)
発芽にはなんと三年もかかるとの事です。2)

ヤドリギのよく見られる形態は丸くこんもりと塊になるタイプと矮性であまり大きくならずに樹の幹に沿って生えるタイプ(dwarf mistletoes, Arceuthobium spp.)です。葉が退化してしまった物もあり、矮性ヤドリギは見た目もかなりエグイ感じです。

この神社のヤドリギを見つけたのは春でしたが、冬の時期、ほとんどの樹々は落葉してしまう中で、丸く茂るヤドリギは大きなサイズの緑の塊で目立ちます。その事から永久の命のシンボルともされています。そのほかには愛、平和、幸運、豊かさ、活気、守り、希望、約束された未来(春の訪れ)など様々あり、それぞれが神話や信仰などのストーリーがあります。特に有名なのは古代ケルト人の司祭によりオークの木から金の斧で採られたヤドリギは富や繁栄を意味する重要な植物であったようです。やがてその習慣は夏至と冬至に執り行う儀式となりました。中世になり当時はまだ単純に(ヤドリギの実を食べていない)鳥の糞からヤドリギが芽生えると誤解されていたため、生命をはぐくみ、豊穣をもたらし、解毒をし、魔除けに効果があると信じられていました。ヨーロッパでは家の入口にヤドリギをぶら下げ、魔女の侵入を防ぐとされていました。3)

今日につながる習慣は、古代ギリシャ・ローマの農神サトゥルヌスを祝う祭の「Saturnalia」が起源とされ、豊穣を意味し、やがて、結婚の儀式につながってきたようです。尚、「Saturnalia」は12月17日から12月23日まで開催されていたという事で、クリスマスの時期とも重なり、この辺からクリスマスにつながった可能性もあるのではないでしょうか。もう一つの説はスカンジナビアンの北欧神話です。光と善の神バルドルがヤドリギの矢で射られてしまったが、彼の父オーディンと母フリッグにより助けられ、ヤドリギの矢は愛の女神に捧げられたとの事で、永遠や愛などの象徴につながっていったようです。尚、アメリカでは移民たちによりこの習慣が受け継がれ、ヤドリギの下を通るカップルはキスを許され、実を一つ取り、最後の実がなくなったヤドリギの下ではもうキスはしない。実は愛をはぐくむ媚薬であり(実際は微量の毒が含まれます)、実がなくなった枝には効果はないとの事なのですね。神話や信仰の一部はレッスンで使用する植物のヤドリギを紹介ページで記載しています。

 

ビャクダン科ヤドリギ属(APG分類) Santalaceaeビャクダン科は8属約450品種が存在します。英語ではSandalwood-アロマオイルや扇子の材料となります。そのうちビャクダンヤドリギ属の中でも70-100種に分類されます。4)


ヤドリギの英語名はMistletoe、アングロサクソンの言葉で 薬を意味する'mistel=drug'と枝を意味する'tan=twig'に由来しています。ケルト人などヨーロッパで使われたヤドリギはViscum album、西洋ヤドリギで黄色い花を付け実は白色。実はオークの樹に付くヤドリギはめったになく、ほとんどがリンゴなどの他の広葉樹だそうです。針葉樹やサボテンに付くヤドリギもあるとの事です。いずれにせよ宿主の樹にとっては危険な植物。生え際から虫が付き、細菌を媒介され病気になり枯れてしまう事が多々あるとの事です。

ヤドリギが大きくなると宿主の樹は弱ってくるのは事実です。倒木などとなるとかなり危険です。御神木に付くヤドリギはかなり大きくなっていますので、神社を統括する所へ連絡しなければです。願わくばクリスマスの時期に切り取って近所の皆さんへお分けいただけると、ありがたい限りです!

 

References:

1)https://biome.co.jp/biome_blog_260/
2)https://sakata-tsushin.com/yomimono/eastasiaplants/detail_1438/
3)https://hort.extension.wisc.edu/articles/mistletoe/
4)https://sakata-tsushin.com/yomimono/eastasiaplants/detail_1438/